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ちょっと和久井のどうなの
3月11日(木)の特集
★殺人事件の遺族が語ること
★和久井キャスター
なぜ、男の刑が軽くなったのか。
愛する娘を目の前で殺害された母親は、
事件と法律の狭間で苦悩しています。
ある日、突然、精神障害を主張した男に
娘の命を奪われた両親。
その思いを取材しました。

★VTR
(おりんの音)
「チーン!」

(無量林さん夫妻)
函館市の無量林博昭さんと妻の廣子さん。

(無量林智子さん・遺影)
2人が手を合わせるのは長女の智子さん享年23。

(バッグを取り出す)
(無量林廣子さん)
「智子のバッグです。
 このときは車の中に置いて智子だけ(車外に)出たので
 そのまま残ったんですよね。
 そうでなければ、血みどろになっていたと思います」

(智子さんの手帳)
バッグから取り出して見せてくれた智子さんの手帳。
10月から始まる手帳に予定はほとんどありません。

(「平成19年」のバスの時刻表)
3年前の11月以来、
バッグの中の時間は止まったままです。

(無量林廣子さん)
「これからだったんですよ。全部これからだったんです」

(無量林博昭さん)
「23年間のこの子の命は何だったのかなと悔しいのと、
 そういう犯罪を犯す人間は許せないという気持ちです」

(当時の事件現場)
2007年11月26日、午前7時半すぎ。
函館市内の住宅街で事件は起きました。
この日、一緒に自宅を出た智子さんと廣子さんを、
ナイフを持った男が襲いました。

(中原哲也被告)
男は、中原哲也被告25歳。
智子さんの大学の同期生でした。

(無量林廣子さん)
「そのとき、智子は『あの人だ』って言ったんです。
 まずは智子をたたいて、ひるんだ隙にナイフを出して、
 智子が逃げたとき、智子の髪をつかんで、
 引っ張ったことは覚えている」

(送検される中原哲也被告)
智子さんをナイフで刺して殺害し、
廣子さんの顔を切りつけて重傷を負わせたとして、
殺人などの罪に問われた中原被告。

(函館地裁)
事件から7か月後に始まった裁判では、
統合失調症を患っていたという
中原被告の精神状態が大きな争点でした。

(横内記者)
「裁判で検察の求刑は懲役25年でした。
 しかし、裁判所の判決は、
 そこから10年を引いた懲役15年でした」

(函館地裁)
なぜ、大幅に刑が軽くなったのか。

(裁判長)
「動機の形成過程において、
 いじめに対して復讐しなければ
 奴隷のように扱われて無残に殺されてしまうという妄想が
 相当程度、影響した可能性は否定できない。
 この妄想は統合失調症に基づくものであり、
 犯行当時の被告人の行動制御能力は著しく低下していた可能性を
 否定することができない。
 被告人は心神耗弱の状態にあったものと認めるのが相当である」

(雲間の太陽)
「心神耗弱」。
物事の善悪を判断して動する能力が大きく失われていたとして、
裁判所は刑を軽くしました。
検察と被告側はともに判決を不服として控訴しました。

(『六法全書』)
刑法第39条。
「心神喪失者の行為は罰しない。
 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」

わずか40字に満たないこの条文が、
無量林さんを苦しめています。

(無量林廣子さん)
「自分で当事者になって、この短い法律を見たんです。
 たったこんな短い法律で判決を聞いたときは、
 本当に智子が不憫でしたね。
 39条に殺人者は救われていると思います」

(あしりべつ病院・柏倉慎院長)
多くの精神鑑定を手がけた柏倉医師は、
39条の意味をこう説明します。

(あしりべつ病院・柏倉慎院長)
「心神喪失、耗弱というのを安易に無罪とか思わないで
 いただきたいのは、この人は治療を優先する
 必要があるということ。
 刑務所に入ったとしても、生きてまた暮らす必要がある。
 皆さんと接触しながら、社会で生きていくわけだから、
 どうしたらいいかということを大きな視点で考えないと
 病気の人は治療して助けて、
 治療することで犯罪を未然に防ぐという考え方もある」

(札幌刑務所)
医療機関ではない刑務所に入れるだけでは、
更生できない人もいる。
その人を見分けることも精神鑑定の目的です。

(あしりべつ病院・柏倉慎院長)
「(犯罪時の精神状態はどの程度までわかる?)
 すごく難しい、いい質問です。
 診察とか心理検査を総合的に判断することである程度できる
 でも、100%ではないことは確実です」

(「裁判員制度」の看板)
去年5月から始まった「裁判員制度」。

(裁判員裁判の法廷)
一般の国民から選ばれた裁判員が
被告の心の状態を見極め、
適正な刑を決めることは本当にできるのか。
制度の大きな課題です。

(「精神鑑定書」の新書式)
国も精神鑑定の改革を進めています。
最高検では、新たな「精神鑑定書」の書式を提示しました。

(最高検・花崎政之検事)
「わかりやすい精神鑑定の立証ということで、
 最高検の精神鑑定研究会で作成するにいたった」

(「精神鑑定書」抜き)
新しい書式では、
責任能力の判断に重要な要素を項目ごとに分けて一つずつ検証するなど、
裁判員への配慮が施されているといいます。

(きょうの札幌地方裁判所)

(札幌高裁を訪ねる無量林さん夫婦)
智子さんの遺影を手に無量林さん夫妻が向かったのは札幌高等裁判所。
智子さんの控訴審を傍聴するためです。
中原被告の精神状態は、どうだったのか。
裁判所は来月、もう一度その判断を示します。

(裁判所から出てくる)
裁判の終了後。

(無量林博昭さん)
「心神耗弱ということを却下して、
 殺人という一人の命を奪った者に対しての厳しい判決を
 出していただきたい」

(意見述書を見せてもらう)
博昭さんが見せてくれたのは、2人の思いをつづった書類。
きょうの裁判で提出するつもりでしたが認められませんでした。

(無量林廣子さん)
「そのときの中原は、どうだったのかですよね。
 普通の青年だったということをとにかく訴えたかった。
 見ているのは私なんですから」

裁判の世界で長らく置き去りにされてきた
犯罪被害者の救済と罪を犯した障害者の処遇。
そのあり方が、問われています。
              END

★和久井キャスター
日本の裁判は、
犯罪被害者や遺族の気持ちをもっと尊重してもいいはずです。
病気が原因で罪を犯した障害者を社会全体で支えることも、
もちろん重要で今後の司法制度の大きな課題です。
しかし、悲惨な事件の中で、
もっとも傷つき、救いを求めている人は誰なのか。
その視点を忘れてはならないと思います。

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